ユーモアと涙を両立させる人間愛溢れる物語を得意とする作家である荻原浩。コミカルな作品からシリアスで緊迫感溢れるドラマまで幅広い作風で老若男女から愛されている作家でもあります。
このページではそんな荻原浩のおすすめ作品を紹介していきます。
神様からひと言
私が荻原浩ファンになったきっかけの作品。
お客様相談室に左遷されてしまった主人公の奮闘が描かれている。
ユーモアに溢れており、痛快で爽快。そして読後感も気持ちがいい。
頑張る世のサラリーマンに是非とも読んでいただきたい傑作。
ハードボイルド・エッグ
チャンドラーのハードボイルド小説に出てくる探偵フィリップ・マーロウに憧れる主人公。ハードボイルドでありながらハートフルでもある。
自分もカッコよくハードボイルドに決めたいのだが、お人好しでおっちょこちょいな性格もあり、中々思い通りにいかない。
そんな主人公がなんとも愛おしく、上手くいかなくても懸命に走る姿に心を動かされる。
オロロ畑でつかまえて
荻原浩のデビュー作。デビュー作から真骨頂である笑いの部分を存分に味わうことが出来る。
弱小広告代理店が過疎地の田舎の町おこしを行う奮闘記。
ユーモアたっぷりの筆致で描かれる心温まるストーリー。
疲れたときに読むとリラックスして癒される効果がある一冊。
なかよし小鳩組
オロロ畑の続編にあたるシリーズ2作目。
普通の中年男性が子どものため、自分のためにと一生懸命頑張る姿に素直に感動する。
笑いあり涙ありというコピーが本当に似合う作品。
3作目の「花のさくら通り」も期待通りの仕上がり。
明日の記憶
めっちゃくちゃに泣いた。若年性アルツハイマーを患う中年男性が主人公。
自分の記憶がどんどんとこぼれ落ちていく描写が実にリアルで生々しく、相当な恐怖を感じてしまう。
この作品の良さはなんといってもラストシーン。
あれほど切なくて美しいシーンには中々お目にかかれないでしょう。
残酷で悲しい物語の中であの綺麗なラストシーンに繋げていく荻原浩の筆力に感服した。
海の見える理髪店
荻原浩がとうとう直木賞を獲得した記念すべき一冊。
「読み心地の良さが抜群」と宮部みゆきが評していたのだが、本当にその通り。
文章が何の抵抗もなくスルスルと身体の中に染み渡っていき。自然に気持ちよく文章に浸ることが出来る短編集。
あの日にドライブ
長年勤めていた大手銀行をリストラされタクシー運転手に転職した主人公。
後悔の念や捨てきれないプライドに日々悩み、葛藤する主人公に強烈に感情移入してしまう。
荻原浩はこういった中年の哀愁を描写するのが実に達者。
現状を受け入れ、過去を振り切って、未来へと向かって少しずつ進んでいくのは難しくて、だからこそ大切なことなんだなと実感した。
さよならバースディ
切なすぎるミステリー。
一応ミステリーというジャンルだが、謎の部分が主なのではなく、あくまで主役は人間ドラマにある。というかミステリー部分はおまけ的に思っていただいて大丈夫。
類人猿に言語を習得させる研究室で起こった悲劇の真相に心が張り裂けそうになる。
噂
荻原浩といえば「人間愛と笑いに溢れる温かい小説を書く人」というイメージを完全に覆した、まさかの猟奇的ミステリー。こんな引き出しもあるのかよと驚いた作品。
まさかオロロ畑と同一人物がこんなサイコパスサスペンスを書くなんて思ってもみなかった。
しかも完成度がめちゃくちゃ高いミステリーに仕上がっているのにもまた驚き。
つくづく器用な作家だなと感心する。
ギブ・ミー・ア・チャンス
不器用ながらも夢に向かって頑張っている人たちを描いた胸にじんわりと染み渡る短編集。
理想とは違う現状に抗いもがき続けるそれぞれの主人公達の人物描写が本当に上手い。
ああ、こういう人いるよなー、なんて幾度も共感してしまう。
やるせない展開も出てくるが、しっかりと希望も見せてくれるところに荻原浩の愛や優しさを感じる。